大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和24年(オ)224号 判決 1951年2月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点について。

しかし原審の昭和二四年八月二九日午後一時の判決言渡調書には「裁判長は判決原本に基づき主文を朗読して判決を言渡した」と明記されている。そして判決の言渡の方式が民訴一四七条にいわゆる口頭弁論の方式に該当することは多言を要しないところであつて、同条は口頭弁論の方式に関する規定の遵守は調書に依りてのみ之を証することを得る旨明定しているのであるから、右調書の記載に反する口頭弁論の方式に関する事実を主張する論旨は理由がない。

同第二点について。

しかし、口頭弁論における証人訊問調書の適式な作成をその弁論終了と同時に完了することは不可能であるとする論旨は独自の見解でとるをえないものであることは民訴一四六条に徴しても明らかなところである。そして原審における昭和二四年八月一五日の本件口頭弁論調書によれば、裁判長は所論の別件記録を法廷に顕出し、被上告人(控訴人)の代理人が同記録中より所論の証人浅野三郎の訊問調書を乙第一二号証として援用し上告人(被控訴人)の代理人は右乙号証の成立を認めると述べた旨記載しあり、同期日において上告代理人が右調書の作成を未了なりとして異議を述べた形跡は右弁論調書上これを発見することができないのであるから本件の右口頭弁論において被上告代理人が乙第一二号証を提出した際にはいまだ同書証は作成されていなかつたとの上告代理人の主張はこれを容認することができないところである。されば原判決には所論のような違法はなく論旨は理由がない。

よつて、民訴四〇一条九五条八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例